「B:The BeginningとA.I.C.O. Incarnationが配信開始」NETFLIXの独占配信で深夜アニメの未来は?

「B:The BeginningとA.I.C.O. Incarnationが配信開始」NETFLIXの独占配信で深夜アニメの未来は?

NETFLIXから見るアニメの未来は

NETFLIXで2018年春アニメ独占配信作品「B:The Beginning」と「A.I.C.O. Incarnation」を観ました。

 

「B:The Beginning」と「A.I.C.O. Incarnation」の視聴感想

 

 

「配信でのアニメ視聴」は見逃し配信であったりレンタルをする代わりだったりブルーレイソフトを購入したいができないだったりと、アニメを観る視聴の方法としては優先順位が一番低く最後の最後で利用する「代替」手段だと今までは思っていたんですが・・・。

アニメーションを供給する側もいろんな意味でビジネスの「取りこぼし」を拾っていく為の手段として配信を利用している現状だと思います。

作品の理想の供給は深夜アニメで作品を観て気に入ってもらいディスクメディアの「パッケージソフト」を買っていただく、のが本来の理想的なアニメのビジネスとしての完結です。

それが供給する側の目指している現時点での作品の成功ではないかと思います。

しかし3月より配信が開始された2作を見てそれが大きく変わり始めたのかも、とすごく思ったんです。アニメーション作品の発信の方法が変わって、それは観る人も含めてアニメを取り巻く環境が大きく変わることではないかと。

目指す場所が一つではない「可能性」が配信(独占)作品にはあると思うのです。

どんな可能性の「アニメの未来」が訪れるのか、ちょっと想像して書いてみたいと思います。

あくまでアニメを視聴する側である「私」の目線で書いたものです。「こんな事が起こっていくのかも?」というくらいの素人の書きものとして軽くお読みください。

 

 

はじめに NETFLIXで深夜アニメが変わる

まず今回の2作は配信専用作品なのでブルーレイ等のパッケージソフトは発売されないはずです。NETFLIXへの加入者を集める為のコンテンツなので他の方法で見れるとその役割が果たせません。ブルーレイを買ってもらう為の「深夜アニメ」とはゴールが違うのです。

それとは裏腹にインターネット動画配信サービスのNETFLIXは今までも独占配信のアニメ作品を配信していたのですが、この2作は日本の視聴者(アニメファン)を非常に強く意識した作り方で、そのまんま今の「深夜アニメ」の延長線上にある感じの作品です。

今までの独占作品作品はクオリティは高いのですが「オリジナルビデオ」っぽい雰囲気のものが多かったと思います。

視聴者のターゲットもある程度普段アニメを観ない人も含んだ広い一般の視聴者向けに作られている感じでした(GANTZやデビルマンがそうだと思います)。

しかしこの2作は「B:The Beginning」が女子(たぶん)「A.I.C.O. Incarnation」が比較的年齢層の高い男性向けの、いわゆるアニメを趣味として鑑賞している従来のファンをターゲットとしている作品に感じました。

今までこういうアニメは地上波や衛星放送の「深夜アニメ」帯が発信の場所となっていたのですが、NETFLIXはそういう作品こそ「契約加入者」を集められる、と思っているのではないでしょうか。

日本向けのカラーがある程度強い作品が海外の視聴者からも求められている、海外ドラマやハリウッド映画をアニメにしただけでは意味がないと。(ただし日本人にしか理解できない作品はダメなのかな。ただ単にかわいい「萌えキャラ」をひたすら押すだけの作品は長期的に契約者を集める力がないはずです)

 

実は「A.I.C.O. Incarnation」の監督「村田和也」さんのインタビュー記事を読んだのですが、この作品は当初「テレビ放送」での公開を予定して作り始めたものだったそうです。

しかし製作途中にNETFLIXがこの作品に興味をもって配信の話が決まったそうです。村田氏はハリウッド的な主人公像ではないキャラクター画(学生服、セーラー服)を見てNETFLIX側が「新鮮な興味」をもっていた、ということを記事中で話されていました。

全世界配信というところを考えても日本のアニメ色が強い作品がユーザーの興味を引く、というこのような判断であればこの流れはずっと続くはずです。

 

ではこのような深夜アニメから「配信」への発信方法が変わる事はアニメの世界にどんな変化をもたらすのでしょうか?。

 

 

ディスクソフトビジネスの本当の終わりが見え始めた

ここ約20年以上アニメーションのビジネスはビデオソフトを商品として販売し利益を得て作品の製作費を回収するスタイルが主流でした。80年代まではおもちゃ等を販売するための販促の番組でしたが、90年代に大ヒットした「新世紀エヴァンゲリオン」から大きく流れが変わったと聞きます。

それまでおもちゃ商品等の「大きなCM」だったアニメでしたがアニメーション作品自体が大きなビジネスになる、ということで販促という枠にとらわれない魅力的な作品が次々と登場し、番組の放送が「ディスクソフト(DVD・ブルーレイ等)」のPRの場へと変化して現在の市場が形成されたという訳ですね。

余談ですがこの流れには家庭用のソフトの再生機であるビデオデッキやDVD、そして密かにゲーム機のプレイステーションなどもそれに貢献したのではないかと思います。

しかし視聴者が作品を以前より購入しなくなりました。これは配信とは関係なくなぜか買わなくなった、としか言えないと思います(この投稿の終わりでもそう書くんですが・・・)。

 

パッケージソフトを視聴者に買ってもらう事が前提で作品を作ってきた製作会社もこうなると事業を続けていくことが困難な状況なので、アニメを売る相手を直接のユーザーから「配信会社」に変える動きを探りはじめたのではないでしょうか。

アニメーションの事業はほとんど「赤字」で終わるそうです。ディスクソフトが売れなければ製作費さえ回収できない事もあり、たまのヒット作でその穴埋めをするのだとか。

その負担を供給側、特に製作会社がどこまで強いられているか分かりませんが、少なくとも配信会社が初めから決まった値段で買ってくれれば最終的に赤字になることはないということですね。

 

 

 

 

アニメ製作本数が今より少なくなる

もし配信会社への納品がビジネスの主流となったら、テレビ放送と違って「とりあえず放送はする」作り方ができなくなるので作る為の時間が今までより多くかかり、製作できる作品数が少なくなると思います。

 

今までは「完成」はしていなくても?放送はされていた(それにも間に合わない事もありますが)のですが、配信はそういうわけにはいきません。

その反面、作品製作に妥協がないクオリティの高い作品が生まれる可能性が大きくあると思います。

NETFLIXの2作も「全話一挙配信」の公開方法で全部完成してからの納品・公開です。

先に書いた村田氏のインタビュー記事でも「かなり伸ばしてもらって作品に更に手を入れる時間ができた」ということを言われています。ちなみに当初のテレビ放送の予定は2017年の1月だったそうです。

「A.I.C.O. Incarnation」は2018年の3月配信開始ですので、テレビ放送だったら1年以上の延期です。「総集編」が何回入ったことか(笑)。でも当然ですが作品は観てみて納得、のクオリティでした。

本数が減ると観れる作品は減ってしまうのですが、これについては意見は分かれると思います。ただ今は多すぎるのかも、と思うこともあります。

結果として全体的なクオリティの基準が上がるのであれば個人的には大賛成です。

 

 

 

 

製作委員会」のあり方の変化

「B:The Beginning」を製作したproduction IGの社長「石川光久」さんのインタビュー記事を読んだのですが、ビジネスの視点でアニメを見た「製作委員会」のことを話されていました。

現在は「製作委員会」がアニメの製作資金を出しており、出来上がったアニメは製作委員会に納品されることによってその代金を受け取れる、という流れになっています。

 

 

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成28年度コンテンツ産業強化対策⽀援事業(映像コンテンツの海外展開と資⾦調達の在り⽅に関する調査事業)報告書」

 

 

現在はアニメ作品が「売れなかった」時のことを考えていろんな会社や団体が製作費を出費しあう「製作委員会」形式のアニメーション作品の作り方が主流となっています。CDを販売するレコード会社や、関連書籍を刊行する出版社のアニメ製作へ精力的に参加しているのをみなさんも良く聞くことがあると思います。

 

「製作委員会」を作っているとアニメを作る為の高額な資金を集めやすくなります。

それとブルーレイのソフトが売れない!という事態になってもその他の商品の売り上げでカバーできたりするからです。これが製作委員会制度でほとんどの作品が作られている理由です。

ですが、配信専用作品ではアニメの配信をする会社が買ってくれる「お客さま」となるのでソフト販売での失敗で赤字になるという心配はとりあえず無くなります。

「ブルーレイが売れなくて赤字になっちゃった!」を考えなくてよくなるのです。

基本アニメの製作会社は作った作品を納品するだけで「売れようが売れまいが」表面上は関係ないはずなのですが、事業を続けていくために現実として「製作委員会」にも参加せざるをえず売り上げを気にしている、というのが現状のようです。今はリスクを負ってアニメを作っているのです。

インタビュー記事の中で石川さんは現状とこれからの変化について話されていました。製作委員会のありかたを考える時期に来ており30~40年前のアニメ業界のように(スポンサーから)製作費をもらってアニメ会社が製作する流れに戻さないと人も育てられないし、それをするための利益をだすことが難しいと。

配信は現在の「製作委員会」を見直すきっかけとなるんではないでしょうか。

※ただし記事を読むとNETFLIXは納品後に製作費やライセンス料を支払うようです。記事中でも資金が初めから潤沢にある「IG」だからできたという事もおっしゃられていました。どの製作会社でもできることではないので急激に「配信アニメ」だけにはならないし、できないみたいです。

 

 

 

 

メディアミックス・ビジネスのが縮小

配信作品はディスクの売り上げを気にしなくていいのでユーザーの嗜好動向を第一優先として考える必要がほとんどないと思います。

それに製作委員会の意向を大きく反映しなくていいとなると原作コミックや小説をアニメ化する必要性が今より低くなるのではないでしょうか。

この事についても石川さんはアニメと出版社(出版原作)と「製作委員会」の関係性の変化ということを話されています。

記事中では「原作を製作会社側が持つと利益が一桁違ってくる」と権利関係のビジネスの面で話されていたんですが出版社との関係性が希薄になると出版社(製作委員会)側からのトレンドの発信も少なく無くなっていくのではないでしょうか。

トレンドがあるというのは個人的には面白いと思う反面、発信する側の押し付け感も強く感じ「あまりにも」連続して似たようなものを見せられると「もういいかな・・」と飽きてしまいます。

トレンドと違うジャンルの作品が好きだという人は「観たい番組」がないのでアニメ自体の視聴から離れていく事もあるかもしれません。

もちろん原作がある作品を「アニメ」で見てみたい、というニーズもあると思うので原作付のアニメは無くならいとは思うんですが。

製作委員会からの発信が少なくなる反面、製作会社からのメディアミックスの発信は強くなると思います。「京都アニメーション」がそうですし、production IGもその流れになることを想定しているようです。

 

 

 

 

 

 

最後に アニメはビジネス「タダ」では見れない

なぜこのような事が起きているかというと、「ユーザーがアニメにお金を出さなくなった」というのが最初の始まりだと思うんですけど、それはどうしてなのか?は難しいですね・・・。

お金を出してブルーレイのソフトを買う価値はないと感じている?。その前になぜ深夜アニメはタダで見る事ができるのかも考えなければいけないようです。

「配信でお金を出すくらいならそんな作品見ないわ~(怒)」みたいな声も聞きますが、見る人にも「ふるい」がかけられているのかもしれませんね。

 

個人的な疑問の答えみたいな事を書いたんですが、それがあっているかは分かりません(笑)。同じような事を考えている人もたくさんいて「何をいまさら」の話題なのかもしれませんが遥か昔にアニメ少年だった私には「こんなに複雑な世界なの!」。ちょっと調べてみて書いたのですが「なるほどね」の業界の事情でした。