「赤字の仕事はもう受けない」鬼滅の刃制作会社社長の発言に思い出す『劇場版SHIROBAKO』、アニメ制作とは終わりのない戦いなのか?

公判でユーフォーテーブル社長・近藤氏から驚きの証言


コロナ禍という興行を行う上で圧倒的に不利な中で大ヒットを叩き出したアニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。その制作会社の社長で脱税の罪に問われているユーフォーテーブル有限会社社長・近藤光氏の公判での証言が大きな反響を呼んでいます。

その中で語られた事を聞き改めて感じたのは「アニメに携わることは『茨の道』である事でした。

大ヒット作出なければ行き詰まるアニメ業界が抱える問題

近藤被告が脱税に手を染めたのはアニメ制作費の赤字を埋めるため。ufotableは携わったほぼ全てのアニメの制作費を出資している「製作委員会」に参加しており(Wikipediaに記載)、作品がヒットしなければ出資分が回収できなくなりそれが大きな赤字となるという訳です。

「じゃあ出資せず制作に徹していれば良いのでは?」と言われる方もいそうですが、それではアニメを制作する集団として会社を成長させる事が出来ないとも言えるのではないかと思います。

ヒット作なしには人(アニメータ)も育てることは出来ず育ったとしても自社に留めておくことも出来ない。それは作品のクオリティにも現れてきてヒット作は更に遠くなってしまう・・・。

「作り手として後世に語られる作品を生み出したい!」アニメに携わっている方であれば誰もがそう思い描く夢だと思いますし、しかしその為にはヒット作が生まれるまで赤字の自転車操業で走り続けるしかないという訳です。

今回の報道内容を知りアニメ業界にあまり詳しくない方は少し驚いた事と思いますが、アニメに携わるとは斯くも厳しい茨の道なのでございます。

アニメ業界の抱えている構造的な問題はざっくり書くとこんな感じでしょうか?。只そう思うだけで特に何が出来るという訳でない私ではありますが。

劇場版「SHIROBAKO」で業界の現実を知って欲しい

今回の報道を聞き私の脳裏にすぐ思い浮かんだのは主人公たちがアニメーション制作に夢をかける作品「SHIROBAKO」。幾多の困難を乗り越えアニメ作品を完成させる中で主人公達の成長やアニメ業界の実情やそれを取り巻く業界人の人間模様が描かれている作品で、ここまで訳知り顔で書いた諸々の業界事情は全部この作品からの受け売りなのでありました(笑)。

この作品のTVシリーズは確かNHKでも放送されたと思うので既に視聴済の方も多いと思うのですが、私が是非観て欲しいのが劇場版SHIROBAKOです。

「SHIROBAKO」はTV版と劇場版が揃ってこそアニメ業界の本当の姿が理解できる作品だと私は思っています。TV版が業界の輝かしい光の部分を描いているとすれば、劇場版でスクリーンに映し脱されるのはその対となる影というか暗黒面(笑)。

これはTV版の業界の描き方が浮かれすぎているだけとも言えるのですが。

劇場作の方はTV版を楽しく視聴した方には辛くなる展開も多いのですが、それでも「アニメの世界で生きていく」というラストに胸を打たれること必至の作品であります!(ちょっとネタバレしてる?)。

最後に「赤字の仕事はもうしない」との近藤社長の弁ですが、アニメに携わるとは決して終わりの無い戦いの道を歩むということは本人が一番承知しているはず。

アニメ業界の構造的問題は別の話として近藤氏には過酷だとしても正々堂々とこれからを戦い抜いてほしいと切に思う私なのでした。炎柱・煉獄杏寿郎のように・・・。

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