劇場作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」公開当時の思い出
劇場公開30周年 「逆シャア」の思い出
1988年に劇場公開された富野由悠季監督作「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」が4Kブルーレイソフトとして発売されることが決定しました。公開当時もうすぐ成人の私が最後に観た「ガンダム」だったと思います。私のアニメは「ガンダムに始まり、ガンダムに終わった」。当時の思い出を振り返ってその思い出を書きたいと思います。
個人的な感想なので特にお話の解釈については「そういう意図では作っていない」という部分もあると思います。あくまでも私の「思ったこと」を書きました。
逆襲のシャアとは
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(きどうせんしガンダム ぎゃくしゅうのシャア、英題:Mobile Suit Gundam Char’s Counterattack)は、1988年3月12日(土)に松竹系で劇場公開されたガンダムシリーズのアニメ映画。英題の頭文字を取り「CCA」、また「逆シャア」などと略されることもある。
本作は『機動戦士ガンダム』から14年後、宇宙世紀0093年の第二次ネオ・ジオン抗争[1]を描いている。一連のシリーズで因縁のライバル同士であったアムロ・レイとシャア・アズナブルの戦いにピリオドが打たれ、劇場版『機動戦士ガンダム』シリーズの完結編とされている。
公開時のキャッチコピーは「宇宙世紀0093 君はいま、終局の涙を見る…」。同時上映は『機動戦士SDガンダム』。
監督は富野由悠季。配給収入6億2000万円、観客動員数103万人。DVDは30万枚出荷
スタッフ
企画・製作 – サンライズ
企画 – 山浦栄二
製作 – 伊藤昌典
原作・脚本・監督 – 富野由悠季
原案 – 矢立肇、富野由悠季
キャラクターデザイン – 北爪宏幸
モビルスーツデザイン – 出渕裕
メカニカルデザイン – ガイナックス(庵野秀明、増尾昭一)、佐山善則
デザイン協力 – 大畑晃一
作画監督 – 稲野義信、北爪宏幸、山田きさらか、大森英敏、小田川幹雄、仙波隆綱
作画監督補 – 恩田尚之、中沢数宣、重田亜津史、小林利充
音楽 – 三枝成章
撮影監督 – 古林一太、奥井敦
美術監督 – 池田繁美
編集 – 布施由美子
音響監督 – 藤野貞義
演出補 – 川瀬敏文、高松信司
プロデューサー – 内田健二
製作協力 – 松竹、創通エージェンシー、名古屋テレビ放送、バンダイ
原画 – 小林利充 梅津泰臣 吉田徹 所ともかず 上野けん 菅沼栄治 千明孝一 内田順久 大平晋也 川元利浩 木下ゆうき 北久保弘之 他
キャスト
アムロ・レイ(声 – 古谷徹)
ブライト・ノア(声 – 鈴置洋孝)
アストナージ・メドッソ(声 – 広森信吾)
アンナ(声 – 丸尾知子)
チェーン・アギ(声 – 弥生みつき)
ケーラ・スゥ(声 – 安達忍)
トゥース(声 – 戸谷公次)
メラン副艦長(声 – 石塚運昇)
シャア・アズナブル(声 – 池田秀一)
ナナイ・ミゲル(声 – 榊原良子)
クェス・パラヤ(クェス・エア)(声 – 川村万梨阿)
ギュネイ・ガス(声 – 山寺宏一)
レズン・シュナイダー(声 – 伊倉一恵)
カイザス・M・バイヤー(声 – 村松康雄)
ホルスト・ハーネス(声 – 池田勝)
ライル艦長(声 – 曽我部和恭)
カムラン・ブルーム(声 – 村山明)
アデナウアー・パラヤ(声 – 嶋俊介)
ハサウェイ・ノア(声 – 佐々木望)
ミライ・ヤシマ(ミライ・ノア)(声 – 白石冬美)
チェーミン・ノア(声 – 荘真由美)
ララァ・スン(声 – 潘恵子)
オクトバー・サラン(声 – 牛山茂)
「逆襲のシャア30周年」世の中の反応
新聞めくったら急に逆襲のシャアで、何事かと思ったら今日で30周年なのね pic.twitter.com/TwxJe7JcSs
— ばあ (@gerobar) March 12, 2018
逆襲のシャア、F91、攻殻機動隊、イノセンスが6月に4K ULTRA HD Blu-ray化 https://t.co/eJa3OlYuN9 pic.twitter.com/shcmjoluQm
— AV Watch (@avwatch) March 12, 2018
4Kブルーレイ「プロモーション動画」
はじめに
新聞に4Kソフト発売告知が載ったりtwitterでトレンドになったりと、30年前の作品なのにいまだに大きな支持を集めているのが分かります。
では公開当時はどうだったかというと・・・一般世間では「空気」のような存在だったと思います(アニメーションの世界全体も)。ガンダムは第一作がテレビアニメで人気を集め、作られた劇場作が大ヒットしテレビの朝のワイドショー等でも特集が組まれたりして初めて社会現象になったアニメでした。「ガンプラ」が社会問題として取り上げられる事もありました。
でもブームは長く続かないもので、なんとか勢いを盛り返すべく1985年に続編の「Zガンダム」が作られたりしたのですが努力もむなしくガンダムもサブカルチャーとしてのアニメ自体も今で言う「オワコン」化していったと思います。今とは世の中のアニメに対する評価が違っていたし、アニメが好きなファンもガンダム以外の「何か」を探している空気もありました。マクロス等「ポストガンダム」の作品も多く作られましたがガンダムにはなれなかった・・・。
「劇場作品」製作にあたって「市場調査」を行った
そんな中、今考えると「なんで?」というタイミングで劇場作が製作決定されました。Zガンダム等の続編が人気があったということもなかった気がしますが、次の社会現象となる作品が全く登場しなかったので「ガンダム頼み」という事があったのかもしれません。
劇場公開が発表された後、アニメ雑誌のニュータイプで「どんなガンダムが見たいか」というような読者アンケート特集が組まれたと記憶しています。
「誰が主人公がいいか」、「誰にキャラクターデザインをしてほしいか」、「主題歌を誰に歌ってほしいか」などのアンケートをとり、その結果に沿った形で作品が作られていきました。
主題歌の「BEYOND THE TIME」 のTMネットワークもアンケート一位の結果を受けて楽曲製作に参加したのだと思います。GET WILDがアニメ主題歌(エンディングですが)としてヒットしていて、妥当といえばそうなんですが当時一番勢いがあったグループに「ロボットアニメ」の主題歌担当を依頼したというのはその当時ではかなりの驚きでした。バブルで製作資金に余裕があったからでしょうか(笑)。
このアンケートは今思うと「市場調査」ですよね。どんな作品をユーザーは見たいのか。インターネットがない当時はトレンドを知る数少ない手段でした。どうすれば最大限にビジネスの結果へと繋げられるかを考えてのことだったのだと思います。
富野監督は自分の作品の不振?でおもちゃ会社が倒産したことがあったりして「売り上げ」にすごく気を使う人だと何かで読んだ気がします。ただの雑誌の一企画で終わらせずにそれをうまく使って作品に反映させたのではないでしょうか。
劇場に行って「これは大人のガンダムだ!」ただの完結編ではなかった
ガンダムの「完結編」ということでまだ少年だった私はいろんな思いで映画館に足を運んだのですが、スクリーンで観てみてこれは「ガンダム?」。アムロやシャアが登場しモビルスーツで戦う、画としてはそうなんですけどお話がそうじゃない、というか完結編と言ってもいいものなのか?。
作品冒頭でシャアは「なぜ隕石を地球に落とすのか」のセリフをアムロにぶつけ、話し合う余地などないと対立の立場を明らかにします。前の作品では「和解した」みたいな感じだったのですがそれを最初から否定して描きます。
前作「Zガンダム」でアムロとシャアを見た人は「ちょっと話の流れが変わりすぎておかしいんじゃない?」と言いそうですが私はそうは思わなかった。というか作劇に勢いがあって「そうなんだ!」と思わず納得してしましました(笑)。
前の流れを断ち切って一旦お話をリセットしているんです。なぜリセットしたかというとシャア対アムロという個人の「対立の物語」を描きたかったからだと思います。アムロもシャアも対立する世界の中で翻弄される弱い若者から十分な立場のある大人になって「勢力の対立」から生まれる前作までのような物語ではなく「大人になった二人の主義の対立」の物語にしたかったからではないでしょうか。
二大体制の対立という所でいうと劇中初盤に軍事衝突を起こしている連邦軍とネオジオンの和平交渉の場が描かれるのですが、交渉会議が終わってシャアが場を去ろうとするとき連邦軍の将校と思われる人物達が静かに「ジークジオン!」とシャアに敬礼します。戦っている交渉相手の中に自分の勢力の人間が紛れている。単純な二大勢力の戦いではない?。
それと劇中にνガンダムを製造しているモビルスーツの製造メーカーが敵のモビルスーツも同時に作っているというセリフがあるんですが、これも単純な体制の対立ではないという事を作中で説明しています。
このようなリセットはアンケートの結果から決めたのでしょうか?。いずれにせよ今までとは違う意味でも現実感がありそれがドラマに深いものを与えている「新しい」ガンダム作品が生まれたのは間違いないと思います。
そして一番衝撃を受けたのが物語のラストです。静かな森の山小屋で赤ん坊が産声をあげるところからエンディングがはじまります。
お話はどんな結末だったのか・・・。話の流れから「分かる」んですが画面でははっきりと描かれていない。一体「GOOD END」なのか「BAD END」なのか。アニメ作品としては今考えても「渋すぎる」終わり方です。
この件に関しての富野監督のインタビュー記事を読んだ事がありますが「アムロとシャアの二人は最後どうなったのか?」というファンからの質問もあったそうです。
それに対して当時の監督は「シャアは死んだ。いい年していつまでもアニメなんか見ていないで卒業しなさい」と言っていました(笑)。
そう、「いい大人」に対して作った作品でもあったんですね。
この作品のある程度の成功でなんとかアニメも「ガンダム」も、なんとか持ちこたえたのではないでしょうか。次の社会現象となるアニメまで。
4Kのブルーレイ化は「どんな意味を持つ」
「お話」としては今も色あせないものがあると思う「逆襲のシャア」ですが、アニメーション作品のパッケージとして見直してみるとどうでしょうか?。私はブルーレイ版を持っているのですが正直がっかりした部分もありました。それはあまりにも「いろんなこと」がわかりすぎることです。
当時のアニメはセルロイドの透明シート(通称セル)に線や色を着色して各コマの画を作ってそれをカメラで撮影するのがアニメの作り方でした。今はパソコンで色を塗っていますが当時はその方法がありませんでした。
セルのアニメがブルーレイになるとどうなるかというとセルのシートの状態が分かってしまうんです。キズや汚れや影、細かいほこりが見える場合もあります。
当時は再生機器の解像度が低く「それが分からなかった」のでそれでよかったのですが、さすがにハイビジョンテレビとブルーレイの画質になるとすごく目立ってしまいます。
「逆襲のシャア」のソフト化がまさにそうでした。この時はデジタル技術でいわばノイズ的な不具合を直す技術がなかった(あったけど時間と費用がかかる)ので「色」は素晴らしいとおもったのですが、キレイな映像かと言われれば返答に困るものであったのです。
ただし作画は素晴らしいことが救いでした。今観ても怪しいところはなく、逆に今はこんな表現は出来ないかもという部分もあります。
まだ商品自体の詳細が明らかにされていないのですが、今回の4Kソフト化ではブルーレイ化時に不満だった部分の改善に期待できると思います。
もちろん「4K化」は現在家庭用のテレビとして主流となっている「4Kテレビ」のフォーマットに対応する、ということではありますが。
それと別の投稿で書いたことがあるのですが、「逆襲のシャア」は新しい世代のディスクメディアが普及する時に登場する作品なんです。DVDもブルーレイもこの作品が発売されてから一気にハードや他の作品の普及が進んだ感じがします。この4K化もそんなきっかけになるのではないでしょうか。
4Kブルーレイパッケージ商品概要
カラー/(予)/250分/UHD BD:約125分(本編120分+映像特典約5分)+BD:約125分(本編120分+映像特典約5分)
UHD BD:リニアPCM(ドルビーサラウンド)・DTS-HD Master Audio(4.1ch)/HEVC/66G/16:9<2160p Ultra High Definition>/日本語字幕付(ON・OFF可能)
BD:リニアPCM(ドルビーサラウンド)・DTS-HD Master Audio(4.1ch)/AVC/BD50G/16:9<1080p High Definition>/日本語字幕付(ON・OFF可能)/全1巻
◎仕様◎
【特典】
・「逆襲のシャア」ドキュメントコレクション
(100P予定、絵コンテやラフスケッチなど秘蔵資料を収録)
【映像特典】
・劇場予告編
・特報(1)
・特報(2)
【音声特典】
・4.1ch アドサラウンド音声
(ドルビーサラウンド音声成分を分解・再配置し、低音成分を追加した本編音声)
【他、仕様】
・特製収納BOX
おわりに
私のアニメはガンダムに終わった、と書きましたが終わりませんでした(笑)。昨年からどっぷりと「浸かって」現役復帰です。「いい大人がアニメなんか見るんじゃない!」・・・ホントそうです。
しかしひとつのジャンルとしてすごく大きく確立したものですよね・・・。アニメもガンダムも。逆襲のシャアが完結編ではない?ということを書きましたが、本当に終わりではなかったというは当時を考えると驚きです。まだシリーズが作られ続けている。
困ったときの「ガンダム頼み」はまだ今もあるのかな。ソフトの発売を考えるとあるのでしょうね。
80年代のアニメがわかる記事「雑誌NEWTYPEの思い出」こちらもお読みください